ゼロトラストとは、現代のセキュリティアプローチの一つであり、従来のネットワークセキュリティの考え方とは異なるアプローチを取っています。ゼロトラストの基本理念は、内部ネットワーク内にいるかどうかに関わらず、すべてのリソースやデバイス、ユーザーが信頼されないとみなすという考え方です。言い換えれば、「信用しない、確認する」がゼロトラストの基本原則となります。ゼロトラストの発想は、従来のネットワークセキュリティモデルである「内部信頼モデル」に対する批判から生まれました。
従来の内部信頼モデルでは、社内ネットワークに接続されたデバイスやユーザーは信頼され、外部からの攻撃に対してのみ対策を講じるというアプローチが取られていました。しかし、近年の複雑化するサイバー攻撃や情報漏洩リスクの高まりにより、この考え方が限界に直面してきました。ゼロトラストでは、ユーザーやデバイスが社内ネットワークに接続されているからといって信頼されるべきではないという前提の下で、ユーザーの認証やデバイスのセキュリティ状態を常に確認し、アクセス権を厳密に制御します。つまり、認証されたユーザーであっても、常に最小限のアクセス権しか与えられず、それ以外のリソースにはアクセスできないように設計されています。
ゼロトラストのコンセプトは、ネットワークだけでなく、アプリケーションやデータに対しても適用されます。アプリケーションやデータにも同様にアクセス制御や認証が行われ、認証されたユーザーでもそのユーザーがアクセス権を持つべき情報にのみアクセスが許可されます。これにより、万が一攻撃者がネットワーク内に侵入しても、重要なデータやシステムにアクセスすることができなくなります。ゼロトラストの実珵上の実装には、さまざまな技術が活用されます。
多要素認証、アクセス制御リスト、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)、マイクロセグメンテーションなどがゼロトラストの実現に貢献します。また、最近では人工知能(AI)や機械学習(ML)を活用して、ユーザーの行動を分析し、異常な挙動を検知するセキュリティソリューションも登場しています。ゼロトラストは、ユーザーが外出先からアクセスするネットワークやデバイスの増加、クラウドサービスの普及など、IT環境の変化に合わせてセキュリティアプローチを進化させる必要性を示しています。従来のモデルでは対応しきれない多様な脅威に直面する中で、ゼロトラストは新たな指針として注目を集めています。
最近では、特に新型コロナウイルスの世界的な流行によってリモートワークが一般化し、従来のモデルではセキュリティリスクが増大する状況となっています。このような状況下でゼロトラストの考え方や技術を活用することは、組織のセキュリティを強化する上で重要な要素となっています。最後に、ゼロトラストの導入は簡単なことではなく、組織全体のセキュリティ文化の転換や新たな技術の導入が必要です。しかし、その努力は組織全体のセキュリティを向上させ、潜在的なリスクに対する備えを整えることにつながります。
ゼロトラストは、単なる技術の導入にとどまらず、セキュリティ意識の向上や適切なガバナンスの確立が不可欠であることを念頭に置きつつ取り組むべきアプローチであると言えるでしょう。ゼロトラストは現代のセキュリティアプローチであり、従来の内部信頼モデルに対する新しい考え方です。すべてのリソースやユーザーを信頼しない前提の下、常に認証やアクセス制御を行い、セキュリティを強化します。このアプローチは、複雑化するサイバー攻撃やリモートワーク増加に対応し、組織全体のセキュリティ意識向上を促すものです。
技術の導入だけでなく、セキュリティ文化の転換や適切なガバナンスの確立が重要であることが強調されています。